雲子春秋

「うんししゅんじゅう」です♡ 三国志とか好きです♡

剽窃されたエピソード

以前ツイッた話。
「杯中の蛇影」ということわざがある。
病は気から、と似た意味。
杯に映ったものを蛇と勘違いしてから病気になったが、それが蛇でなかったと知って快癒したという話から来ている。
『晋書』楽広伝にある話だ。

『晋書』巻四十三 楽広伝
嘗有親客,久闊不復來,廣問其故,答曰:「前在坐,蒙賜酒,方欲飲,見杯中有蛇,意甚惡之,既飲而疾。」于時河南聽事壁上有角,漆畫作蛇,廣意杯中蛇即角影也。復置酒於前處,謂客曰:「酒中復有所見不?」答曰:「所見如初。」廣乃告其所以,客豁然意解,沈痾頓愈。

にあり、楽広とその客のエピソードということになっている。
『蒙求』も『晋書』からそのまま引用している。


ところがどっこい

『風俗通』巻九 怪神
予之祖父郴為汲令,以夏至日請見主簿杜宣,賜酒。時北壁上有懸赤弩,照於杯中,其形如蛇。宣畏惡之,然不敢不飲,其日便得胸腹痛切,妨損飲食,大用羸露,攻治萬端,不為愈。後郴因事過至宣家,窺視,問其變故,雲畏此蛇,蛇入腹中。郴還廳事,思惟良久,顧見懸弩,必是也。則將門下史將鈴下侍徐扶輦載宣於故處設酒,杯中故複有蛇,因謂宣:“此壁上弩影耳,非有他怪。”宣意遂解,甚夷懌,由是瘳平,官至尚書,曆四郡,有威名焉。

『晋書』は唐代に編纂された物だが、後漢末の最強泰山太守応劭さんによる『風俗通』に同様のエピソードが収録されている。
ここでは応劭の祖父応郴とその主簿杜宣のお話になっている。


二つのバージョンには少し違いがあり、『晋書』では壁に描かれた蛇が杯に映っていた。
一方『風俗通』で杯に映ったのは壁に掛けられた赤い弩であった。


国語で習ったけど確か『風俗通』バージョンだった希ガス
かの有名な『晋書』は剽窃していたのだ!
著者死後五十年以上経って著作権が切れていたのだろう。