雲子春秋

「うんししゅんじゅう」です♡ 三国志とか好きです♡

漢文を読もうその5〜体言の否定〜

やってきました不定期更新漢文講座。
今回は体言、つまり名詞の否定です。
今回から例文の語句の解説がテキトーになります。自分で調べる癖をつけよう!
ググるだけでも主な意味はわかります。漢和辞典を使うとbetter!

名詞の否定語には“非(あら-ズ)”“無(な-シ)”があります。
“不”は用言の否定ということで副詞的に働く語だったのですが、“非”や“無”は目的語を打ち消す動詞ととらえることができます。
というわけでここでは動詞として考えていきましょう。
動詞なので、語順は当然「主語+非/無+目的語」となるわけです。
意味としては“非”は「〜ではない」、“無”は「〜はない」、“無”とほぼ同じ意味の字には“莫(な-シ)”なんかもあります。


では例文。まずは“非”から

三国志』巻六 董卓伝注引『英雄紀』
汝非吾君,吾非汝臣

前半部は“汝(なんじ)”が主語。
“吾(わ-ガ)君”は目的語です。
“非(あら-ズ)”が出てきましたね。「〜ではない」という意味ですから、まとめると「あなたは私の君主ではない。」となるわけです。
後半部も同様に、「私はあなたの臣下ではない」。


次に“無”の例文。

三国志』巻一 武帝
軍無輜重

“軍”が主語、“輜重(しちょう)”が目的語。“無”があるので「軍は輜重がない」となるわけです。
“無”による否定の場合、目的語が主語的にはたらくことに注意!*1


“無”の下には動詞(+目的語)がくることもあります。
そんなときは、まず“無”以下のまとまり(動詞句)だけを訳してしまいます。
次にそのまとまりを名詞に変える魔法を使いましょう!
まとまりを名詞にするための呪文は「〜スルコト(モノ)」

三国志』巻五十八 陸遜伝附陸抗
無用兵馬

“無”はとりあえずシカトして、“無”以下のまとまり“用兵馬”を訳して、「兵馬を用いる」
動詞に名詞化の呪文をかけて
「兵馬を用いること」。
それに「無し」をつけるだけ。
「兵馬を用いること無し」
また、「兵馬を用いるは無し」のように「こと」を省略して動詞の連体形+はとすることもあります。


二重否定というものは結局これの延長にあたります。“無”以下の動詞に“不”がついただけなんです。
上の例文を二重否定にすると

無不用兵馬

“無”以下のまとまりが“用兵馬”から“不用兵馬”になっただけで、やることは一緒。
訓読すると「兵馬を用いざる*2は無し」
意味は「兵馬を用いないことはない」=「必ず兵馬を用いる」
回りくどい言い方だけれど、強い肯定をあらわすらしいよ。
“非”を使った二重否定もありますが、“非”以下のまとまりを先に読んでしまえばなにも難しくないのです。


否定に限らず、漢文ではまとまりを意識することが重要です。
さまざまな文を読んで、まとまりを見つけられるようになりましょう。


今回はいつもにましてややこしくなってしまった。
解説するって難しい>

*1:「〜を」ではなく「〜は」「〜が」となる。

*2:二重否定の場合は「こと」をつけないことが多いが意味さえとれれば何でもいい