雲子春秋

「うんししゅんじゅう」です♡ 三国志とか好きです♡

漢文を読もうその4〜用言の否定〜

待ってる人はあまりいなそうだけれどもお待たせしました。
久々の漢文講座。
否定形は数回に分けて行います。
今回は用言(動詞、形容詞、形容動詞)の否定を取り扱います。


用言の否定には通常“不(ず)”、“弗(ず)”を用います。
基本的な語順は
「主語+不(弗)+用言」
となり、“不(弗)”以下の用言を否定します。
次の例文を見て下さい。

三国志』巻一武帝
太后聽(太后聴かず)

太后”は「皇帝の母」という意味で名詞、主語にあたります。
“聽”は“聴”の旧字体ですから、そのまま「聴く」という意味の動詞ですね。
動詞である“聽”の前に“不”があり、“聽”を否定していますから、この文の意味は「太后は聴かない」となります。


少し特殊な否定形に“未(いま-ダ)”があります。
学校では再読文字として習います。
再読文字というのはつまり、一語で同時に二つの意味を表すということです。
“未”には否定の「〜しない」という意味の他に同時に「まだ」という意味を持っているのです。
語順は“不”と同じで「主語+未+用言」となります。
“未”の後ろに“嘗(かつ-テ)”という字が入り、さらに「まだ」の意味が強調されることもあります。
その場合“未嘗”を「いまだかつて」と読みますが、今でもよく使われますね。
“未”が出てきても、基本的には“不”と同じようにとらえて、「まだ」という意味を附加するだけです。
以下例文。

三国志』巻一武帝
劭兵至(劭の兵未だ至らず)

“劭”は応劭(人名)のこと、漢文では一度出てきた人が姓を省略して書かれる事が多いです。
“兵”は名詞。
名詞が二つ並んでいるので、あわせて「劭の兵」で主語ととらえます。
“至(いた-ル)”は動詞、そのまま「いたる」という意味です。
そして“未”があるので、“至”を否定した上、「まだ」の意味を付け「応劭の兵はまだ至らない」となります。


基本的な用言否定の説明をした所で、次によく出てくる構文をいくつか取り上げます。
“不可(べ-カラ ず)”は今でもよくつかいますね。
“可(べ-シ)”を「許可」の意味でとらえて「〜してはいけない」、“可”を「可能」の意味でとらえて「〜できない」と訳します。


不能(あた-ワ*1 ず)”は「〜できない」という意味です。
“能(よ-ク/あた-ウ)”は「できる」という意味です。
“不”で否定して「できない」。単純です。
訓読的な注意としては、“能”は肯定文では「よ-ク」、否定文では「あた-ウ」と二つの読み方をするという点です。
意味を取るだけならほとんど関係有りませんが・・・。


今回はこんな所で終了。
構文や二重否定や部分否定などまだ説明していない所はありますが、次回以降に回します。


次回予告。
体言・・・。お前もか・・・!
用言に続き否定される体言たち・・・。
体言ばかりか用言をも否定する力を持った悪の化身“無”。
今明かされる否定形の全容。
彼らの運命や如何に!?


TO BE CONTINUED.

*1:歴史的仮名遣いでは“ハ”になりますが、面倒なので、この漢文講座では現代仮名使いをもちいます。